代理店の無言の圧力 RTX2080Ti、2080がWeb先行の訳

※ 本記事は、有識者の情報をもとに、筆者の予想を含めた記事です。記述内容が事実である保証はしません。


RTX 2080Ti、RTX 2080の価格が横並び

Amazonパソコン工房Arkドスパラ
ZOTAC RTX 2080 Ti AMP¥183,384
ZOTAC RTX 2080 AMP¥125,064
MSI RTX 2080Ti GAMING X TRIO¥188,784
ASUS DUAL-RTX2080TI-O11G¥183,384¥183,384¥183,384¥183,384
ASUS ROG-STRIX RTX2080-O8G-GAMING¥140,184¥140,184¥140,184
ASUS DUAL-RTX2080-O8G¥129,384¥129,384¥129,384¥129,384

あれれーおかしいねー横並びだねー


何が起こってるの?

代理店「うちは¥148,580で卸します。まあ、そちらはだいたい¥188,784ぐらいで売るといいんじゃないですかね?」

販売店たち「「「はい」」」

代理店「あ、あとWeb先行でお願いします。店頭での予約は受け付けないでね。」

販売店たち「「「…………………はい」」」


(翻訳)

代理店「うちは¥148,580で卸します。まあ、そちらはだいたい¥188,784ぐらいで売るといいんじゃないですかね?」

代理店(値引きしたら割当に対して全然出荷しないでやろう。A店の2080の割当は50本か… もし値引きしたら5本出荷制限のペナルティだ。理由は適当に「物が来なかった」でいいだろ。これなら独禁法に引っかからない。)

販売店たち「「「はい」」」

販売店たち(あー値引きしないでこの値段で売れってことね。値引きしたら、たぶん出荷本数絞られそうだな… 絞られて顧客からの「なんで発売日にないんだ」クレーム処理するのも面倒だ…。 まあ初物とはいえ売れるだろうし従っとくか。うちも十分儲かる値付けだし。)

代理店「あ、あとWeb先行でお願いします。店頭での予約は受け付けないでね。」

代理店(Web先行なのはなんでかって? そりゃ監視が楽だからに決まってるだろ。9/20の発売日以降は、まあ自由に値段つければいいさ。)

販売店たち「「「…………………はい」」」

販売店たち(あーそーゆーことね。完全に理解した。まあ顧客から問い合わせ来たらWebと同じ値段で売れば問題ないだろ。)


要約

  • 9/20までは店頭、Webでの値段は変わらない。
  • 9/20以降は売れなければすぐ値下がり(店の利益を削って処理)、売れたら値段据え置きで売り続けると思うよ。
  • 事実上の再販売価格の拘束が発生中。

「RTX」となった Geforce RTX 2080Ti 2080 2070 のおさらい

NVIDIA の GeForceグラフィックカード 最新シリーズである "GeForce RTX 2080Ti" 及び "GeForce RTX 2080"、"GeForce RTX 2070"が発表されました。
自分の復習も兼ねて詳細な解説をしていきたいと思います。


スペック

まずはスペックを見てきましょう。
主なスペックは下記の表の通りです。

RTX 2080 Ti(GTX 1080Ti)RTX 2080(GTX 1080)RTX 2070(GTX 1070)
CUDA core4352(+21%)35842944(+15%)25602304(+20%)1920
FP32[TFLOPS]13.45(+19%)11.3410.07(+14%)8.877.47(+16%)6.46
Base Clock[MHz]1350(-9%)14811515(-6%)16071410(-6%)1506
Boost Clock[MHz]1545(-2%)15821710(-1%)17331620(-4%)1683
MemoryGDDR6 11GBGDDR5X 11GBGDDR6 8GBGDDR5X 8GBGDDR6 8GBGDDR5 8GB
Memory Bus[GB/s]616(+27%)484448(+40%)320448(+75%)256
TDP[W]250250215(+20%)180175(+17%)150

GTX シリーズと比べるとCUDAコア数は微増となっています。
CUDAコア数基準で考えると単純計算で15%から20%の性能向上と言えるでしょう。

グラフィックスメモリの仕様がGDDR6となっています。HBM2ではありません。
注目すべきなのはRTX 2070がGTX 1070に対してメモリバスが175%となっています。
その他を見ても、RTX 2080Tiのメモリバスが
600GB/sを突破
するなど、完全に4K及び高解像度をターゲットにしている構成です。

これだけを見ると今回のRTXシリーズはメモリバスが増加し、高解像度環境以外の性能が伸びていないような気がするのですが、単純に比較できるようなものではないということが判明しています。


アーキテクチャの刷新

現在発売されている GTX 1080 などに利用されているアーキテクチャは Pascal(パスカル) アーキテクチャですが今回の RTX 2080 などに利用されるアーキテクチャは Turing(チューリング) となります。

TuringアーキテクチャにはCUDAコア以外にも2つのコアが搭載されます。
その1つが"RTコア"です。


RTコア

RTコアを説明する前にグラフィックスのレンダリングについて知っておく必要があります。
現在のゲームなどのリアルタイムグラフィックスはラスタライズというレンダリング手法を用いています。

単純に言うと平面にポリゴンを投げて、場合によってはレンダリング対象から除外し高速に描画するという手法です。

マイクロソフトのレイトレーシング解説記事より、説明を独自に追加したもの


この手法に対しもうひとつのレンダリング手法としてレイトレーシングというものが存在します。

こちらも単純に言うと、視点から描画対象に対してレイ(Ray:光線)を飛ばし描画対象に当たった時点でさらに光源にレイを飛ばし、情報を描画するという手法です。
我々が実際に目で見ている情報は、光源から届く光の反射情報を認識しているわけですが、その逆を行っているイメージです。


※NVIDIAスライドより一部抜粋

より詳細な解説は、NVIDIAのブログが詳しいので、そちらを参考にしてください。 https://blogs.nvidia.co.jp/2018/03/26/whats-difference-between-ray-tracing-rasterization/
https://blogs.nvidia.co.jp/2018/08/14/ray-tracing-global-illumination-turner-whitted/

RTコアはレイトレーシングにおけるレイの投射専門の演算コアになります。
なぜ別コアが搭載されたと言うと単純に今までのCUDAコアによる汎用演算ではリアルタイムのレイトレーシングを行うことが困難だからです。

従来(GTX 1080Ti)と今回のRTコアにおけるレイの投射本数をまとめたものが下記図です。

Rays per secRays per Pixel (Full HD)Rays per Pixel Frame (FullHD & 60FPS)
RTX 2080Ti10Giga483180
RTX 20808Giga386564
RTX 20706Giga289948
(GTX 1080Ti)1Giga4838
  • Rays per sec : レイ投射性能(毎秒)
  • Rays per Pixel : Full HDの場合に1画素に割り当てることのできるレイの毎秒投射本数
  • Rays per Pixel Frame : Full HD・1画素における60FPS時の1フレームごとのレイ投射本数

従来では不可能だったが専用コアを用いることでなんとか使える程度に持ってきたというのが正直な感想です。
フルHD画質ならフレームあたり80本のレイの投射が可能になっています。

リアルタイムグラフィックでレイトレーシングが採用されることでゲームプレイの変化は明らかです。
例えばFPSとかであれば水たまり・車に映った敵兵ラスタライズでは映らなかった影から敵兵を察知し 対応を考えるという新しいプレイングが考えられます。
Battlefield VPUBGなどではリアルタイムレイトレーシングに対応するとのことなので、もしかしたらハードウェアの差で有利不利が決まってしまうかもしれません。

※暫定対応タイトル一覧

※因みに、実際のゲームプレイでは、ラスタライズとレイトレーシングのハイブリッドで描画されるそうです。


Tensorコア

2つ目の別コアは"Tensorコア"です。

もとは"Titan V"から搭載されたコアで主に機械学習用途に用いられるコアでした。
リアルタイムグラフィックスの描画におけるTensorコアの主な役割は、ディープラーニングを用いてグラフィックスからノイズを高速に取り除く(アンチエイリアシングをかけること)です。

NVIDIA 曰く、Tensorコアを効率的に利用することによって4K高画質でも十分なフレームレートが確保されるとのことです。
公式スライドを見ていきましょう。

(※GTX1080のFPS数値は独自調査したものをスライド内に追記しています。RTX2080の数値はグラフからの予測値です。空欄2つは現時点で未発売。)

最初は4K解像度でRTX 2080はGTX 1080比2倍の性能を発揮できるという趣旨のスライドです。
深緑のバーがDLSSを利用しない場合、黄緑のバーがTensorコアでDLSSを利用した場合の上昇分です。

TiがつかないRTX 2080でもなんとか4Kが楽しめるということを主張したいのだと思います。

…全体的に盛っている気がしますが、これが真実だとすればCUDAコア数同士だけの性能比較はあまり意味をなさないであろうというのが結論です。

  • RTX 2080:10.07 TFLOPS (+14%)
  • GTX 1080:8.87 TFLOPS

このスライドは、4K&HDR/60fps Overでプレイできるタイトルをアピールするためのものです。

前述のスライドの通り、従来の "GTX 1080" では"FINAL FANTASY XV"の4K HDRでの平均FPSは約30FPSでしたが、Tensorコアを利用したアンチエイリアシングによってRTX 2080環境下では平均FPSが約60FPSとなり"GTX 1080"と比較して快適にゲームができるということを示しています。(微妙に前のスライドが盛ってる…?)

…とまあこのようにNVIDIAは純粋に微細化でCUDAコアを増やしていく方向から、演算内容別の専用コアを乗っける方向に舵を切りました。
実ゲームでの性能はやっぱり動かしてみないとわからなさそうです。

あと個人的に気になるのは、RTコアとTensorコアがCGレンダラやCUDA上で操作できるかどうかですね。
CUDA10ではTuringアーキテクチャに対応するようですが、Geforce RTXでは無効化されているかもしれません。
(ゲーム性能よりも、こうした専用コアの説明が多かったので、おそらく利用できるとは思いますが…)
https://developer.nvidia.com/announcing-cuda-toolkit-10


価格

高いです。間違いなく高い。
日本円予測値とともに下表に示します。

MSRP日本円予想値/(日本販売当初価格)
RTX 2080Ti$999¥159,800
(GTX 1080Ti)$699(¥108,199)
RTX 2080$699¥109,800
(GTX 1080)$699(¥108,122)
RTX 2070$499¥77,980
(GTX 1070)$399(¥65,907)

2080Tiに至っては大台の15万円を超えてきそうです。
2080も米国MSRPが$699のため、過去事例より10万円を超えることが確実です。
10万円超えなかったら木の下に埋めてもらっても構わないよ!

  • フルHDでレイトレは別にいいかな
  • 機械学習とかやんない

な人は現行のGTX

  • 4K・高解像度でFPSもそれなりに出てほしい
  • 機械学習する
  • 3DCGレンダリングする

な人はRTX

のように住み分けされそうです


総評

正直わからんから買って試します。
(2080 or 2080Ti)